1. 直接作用と間接作用
    直接作用と間接作用

  2. ムコ多糖の作用
    ムコ多糖の作用


  3. ムコ多糖の量や質は
    自分でもわからない

1.直接作用と間接作用

はじめに述べたように、ムコ多糖は硫酸基を持ったアミノ糖が鎖状につながった糖鎖が数多く集まって「タワシ状」の形をしています。この形が水を取り込む力(保水力)をもたらす根拠になっているのですが、体液を取り込む以外にも発痛物質やカルシウム(Ca)などのプラス電荷のイオンを取り込んで運搬するというムコ多糖自らが持つ作用があります。これをムコ多糖の”直接作用”と呼んでいます。一方、ムコ多糖自身の作用ではなく、体液の作用がより発揮されたことで起こる作用を”間接作用”と呼んでおり、ムコ多糖の作用を考える上で2つを区別して考えています。間接作用で得られる結果はあくまでも体液がもたらしたものですが、細胞周囲に体液が潤沢に存在したために可能となる結果で、そうさせたのはムコ多糖の保水力なのです。ムコ多糖が体液を保持して、細胞外環境を良好に保ったからこそ、体液の作用がより発揮されたのです。主役は体液なのですが、脇役があっての主役なのです。名脇役ムコ多糖が」演じるのが”間接作用”です。

2.ムコ多糖の作用

細胞外環境の保全と水分量の調節

ムコ多糖自身の鎖状構造の特性と、硫酸基の電荷によって保水力を持ち、細胞外環境に体液を保持する直接作用で水分量を調整しています。血管内外はもとより、細胞内とも移動できる体液を保持することで、浸透圧による水の動きにも影響するムコ多糖は、この場面でも重要物質としての役割を果たしています。

電解質・陽イオンの移動

強いマイナス電荷の硫酸基を持つムコ多糖は、プラス電荷を持つ陽イオン(ナトリウム:Na、カリウム:K、カルシウム:Ca、マグネシウム:Mgなど)と互いに引き寄せ合います。これらのイオンは体液と同様にムコ多糖内に保持されて移動し、目的に応じた部位に運ばれます。例えばカルシウムイオンは造骨に必要で、ムコ多糖はこのカルシウムイオンを骨に運搬しています。

電解質・陽イオンの移動

骨・軟骨形成への影響

造骨には前述のカルシウムイオンが関与するのみではなく、骨・軟骨細胞が作るコンドロイチン硫酸などのムコ多糖自身が骨・軟骨形成に大きく関与しています。
骨はリン酸カルシウムなどの無機質と、コラーゲンやコンドロイチン硫酸などの生体物質から成り立っています。

骨も軟骨もムコ多糖が直接作用、間接作用で関係しているのに加えて、それ自身が材料となってできている組織なのです。

創傷治癒

創傷治癒には欠損部分を覆うための修復材料(蛋白質:アルブミン)が必要となります。露出した損傷組織から体液が滲み出し、ムコ多糖の保水力によって創傷面に保持されます。続いて細菌と戦う免疫系細胞や、新たに作られる組織構築に必要な間葉系細胞が遊走してきます。この細胞遊走やアルブミン供給は、損傷部分と健常部分とがさらに血管内まで連続して体液でつながった細胞外環境として出来上がっているからこそ可能となるのです。

このように体液は創傷治癒過程のすべてに関与する不可欠・重要なもので、それを支えるのがムコ多糖です。

関節内腔での影響

関節は骨と骨の「ジョイント」の役目で、すり合わせ部分にあるのが関節軟骨で、骨と骨が直接ぶつからないようにしています。関節を包んでいるのが関節包で、滑液(関節液)という潤滑油を分泌する滑膜と、繊維膜の2枚の膜でできています。滑液の主成分はヒアルロン酸です。この滑液は潤滑油の働きもさることながら、軟骨への栄養を運搬するという、もう1つのムコ多糖としての重要な作用があります。この潤滑作用と物質運搬作用は、ヒアルロン酸の持つ強力な保水力と物質保持性によって可能となり、まさにムコ多糖の働きといえるものです。

一方、軟骨の細胞外マトリックスの主成分は、コンドロイチン硫酸とケラタン硫酸で、の2つから構成された、アグリカンという構造を持つムコ多糖です。軟骨中に含まれる量はコンドロイチン硫酸がケラタン硫酸に比べ圧倒的に多い反面、ヒアルロン酸と結合固定されていないために消耗されやすく、主に関節軟骨で減少するムコ多糖はこのコンドロイチン硫酸といわれています。
この様に関節内では、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などの有名なムコ多糖が主役を演じています。

血管の弾力性

動脈は静脈とちがい、血管内膜(内皮細胞)、中膜、外膜の3層からできています。これらの各層間にはムコ多糖があって、血管の柔らかさ・弾力性の維持に役立っています。また内皮細胞の血管内腔側には、ヒアルロン酸が内貼するように存在して、血管内に血栓ができるのを防いでいます。
血管内皮細胞が活性酸素などで傷付けられると、ここでも創傷治癒機転が働きます。他の部位と同様に体液中の蛋白質や免疫担当細胞が動員されて、肉芽形成が起こります。

脂質分解作用と血液凝固阻止への影響

血液中の脂肪は、血管内皮に存在するリポプロテインリパーゼ(LPL)という酵素で分解されます。血管内皮にあるムコ多糖がこの酵素を直接活性化することは、多くの動物実験で確認され、これがムコ多糖の脂質分解促進作用として報告されています。
また血液凝固因子と呼ばれる蛋白質を、ムコ多糖の1つのヘパリンが阻害することも以前からよく知られ、その精製物が広く医療現場で血液凝固阻止剤として使用されています。

角膜での涙の保持作用・眼球硝子体の主成分

1934年ムコ多糖の研究で有名なカール・メイヤーらが牛の眼の硝子体から新しいムコ多糖を単離し、この物質がウロン酸とアミノ糖を含むことから「hyaloid(ヒアロイド:硝子体)+uronic acid(ウロン酸)⇒ hyaluronic acid(ヒアルロン酸)」と命名されました。眼球硝子体がヒアルロン酸の語源であり、ムコ多糖の起源となった臓器です。
角膜表面には、涙の膜を付着させる役目のムコ多糖のヒアルロン酸が存在します。涙の主成分もムコ多糖であり、これを補う目的の点眼薬も多数使用されています。

角膜は光の屈折を行う重要器官です。しかしその表面はすぐ外界に接しており、障害を受けやすい状態にあります。それを防いでいるのが抗菌成分も入っている涙です。しかし上まぶた裏の涙腺から分泌された涙が、角膜の表面に付着していなければ何の役にも立ちません。ムコ多糖が涙を角膜の表面に付着させる作用を持ち、角膜保護の役割を果たしています。
水晶体はコラーゲンの詰まった袋で、年齢により酸化され白濁してゆきます。これが白内障です。
硝子体は大半が水分で、硝子体の奥に接する網膜上皮から分泌されたヒアルロン酸と混ざってゲル状になり、眼球にハリを保つ役目を果たしています。この硝子体が年齢と共に萎縮し、中に小さな空間ができて虫が飛んでいるように見えることがあります。これが飛蚊症です。
眼球には分泌されたムコ多糖が重要な役割を果たす部位が多くあり、ムコ多糖の微妙な変化が視覚を通して敏感に感じ取れる器官です。

免疫反応に対する影響

細菌やウイルスから身を守るためにそれらを除去しようとする免疫反応は、重要で必要不可欠な機構の1つです。
しかしこの免疫が外界の異物と自己の身体の判別がつかなくなり、自身の一部までも攻撃しまうようになった病的状態を「自己免疫疾患」と言います。関節の滑膜がターゲットに攻撃され破壊されてしまうのが、自己免疫疾患の1つとして最も知られている関節リウマチです。

一方、異物除去という正常の免疫反応が過剰になり、病的ではないものの不愉快な状態になったのを「アレルギー反応」と呼びます。代表的なのが花粉症です。また皮膚に痒みと膨隆疹が出る蕁麻疹は、特殊な免疫伝達物質のIgEが関係した異常免疫反応で、特異的な少しの刺激が契機となり皮下の肥満細胞からヒスタミンが放出されて症状が出るものです。

いずれにせよ免疫応答というものが、免疫細胞間の物質移動による幾つもの情報交換を基にして起こっている反応です。
自己免疫疾患やアレルギーには免疫担当細胞間での誤伝達や伝達不足などが関係していることは容易に想像できます。詳細なメカニズムは不明でも、その情報伝達の場である細胞外環境で体液を保持しているのはムコ多糖であり、ムコ多糖が免疫調整作用やアレルギー反応に深くかかわっていることは間違いありません。

痛みに対する影響

コンドロイチン硫酸を精製した注射剤や内服薬は病院でも使用され、さらに市販薬も多数販売されています。多くは鎮痛剤として使用されています。動物実験などで、コンドロイチン硫酸が炎症性肉芽の発育抑制することや、関節炎時の滑液ではコンドロイチン硫酸の量が減っているなどの科学的根拠に基づき、製薬として認められたものです。これらの科学的根拠は、ムコ多糖が鎮痛・除痛の直接作用を持つ証拠を示していると言えます。

痛みとは「発痛物質」が炎症部位から脳内に運ばれ、痛いと感じるものです。炎症による発痛物質の産生は減らせなくても、発痛物質を炎症部位から速やかに分解除去できれば脳へ運ばれる量が減り、痛みが緩和します。除痛という場面では体液中の分解された発痛物質を、速やかに運び去る作用はもちろんのこと、その移動環境を改善するという作用も重要なポイントです。

皮膚のハリとシワ

ムコ多糖には保水性があるので、その作用が皮膚のシットリ感につながることは容易に理解できます。

それに加え、皮下組織はコラーゲンやエラスチンなどの蛋白質が作る網目構造(細胞外マトリックス)を、ムコ多糖が隙間を埋め、体液保持しているという一番身近で理解しやすい細胞外マトリックスの場所です。ここでのムコ多糖は、細胞外環境を体液で満たし物質移動を仲介する間接作用だけでなく、体液を保持したムコ多糖自体が皮下組織内で物理的に体積を持ち、加えて流動性があるために、皮膚の外からは一定の弾力性を持つ状態として認識できるのです。これが皮膚のハリです。ハリがあれば皮膚の溝(シワ)も目立ちません。

このような皮膚の弾力性のもとになっているのが水(体液)を含んだムコ多糖自身なのです。

皮下組織でのムコ多糖の働きには、皮膚のハリに対する直接作用と、体液中を物質が移動する場を確保する間接作用の両方があることを忘れてはいけません。

3.ムコ多糖の量や質は自分でもわからない

ムコ多糖は生まれつきある基礎物質で、ない人はいません。あって当たり前の物質です。それゆえ現在の量や質は自分でもなかなかわかりません。ムコ多糖が足りない状況でも体液はそれなりに保持され、それなりの細胞外環境となって細胞活動が維持され、自分として不自由を感じないのです。

今の自分のムコ多糖が足りているのか? その内容はどうなのか? これを知ることは、自分の身体であるにもかかわらず困難なのです。
しかしムコ多糖の量や質が改善され、体液保持力がよくなると細胞外環境が変わり、体液量には変化がなくても細胞周囲で物質がより移動しやすくなります。つまり細胞間の連絡がよくなり、細胞活動が活発になり、生命活動も活性化された状態に変わっています。
今まではそれなりにしか働いていなかった部分が、活発化することで「何かがちがう!」と気づくのです。